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福岡市中央区薬院、鍼灸専門・高木治療院のホームページです。

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ホワイティ薬院302号

攻めの膝治療

膝治療はアクティブに


 膝の痛みについての話です。一口に膝関節の痛みは語れません。というのは、複雑な構造と障害の範囲、度合い等など考えるべき要素が沢山あるからです。治療は困難で、誰のご近所にも膝痛で悩んでいる人はかなりいると思います。

 病院や接骨院、カイロ、整体、鍼灸から健康食品、ウォーキング、大腿四頭筋訓練・・・・・、ありとあらゆる方法を試してもムリな慢性の膝痛を持っている人達は、手術するかしないか悩み、手術した経験のある人から話を聞けば、その惨憺たる事実に、やはり悩んでしまう。

 手術したってよくならない場合が多い。水が膝に溜まる状態で(関節水腫による腫れ)、関節の穿刺による滑液摘出を繰り返す事により、関節の変形が急速に進行し、くの字に曲がってきてしまう。
「水を抜くのはクセになる。」という事は、膝疾患の先輩方から現在いる膝疾患患者に事実として伝わっているが、病院(整形)の医師らは、この事を無視しているかのように滑液摘出を安易に行おうとする。それしか出来ないから仕方ない。痛いと言えば注射され、それでも痛いといえば手術しろと言われ、それがイヤなら湿布で我慢しろと医師は言う。

 患者さんは、注射されたくないから、痛くないと医師にウソをつく。慢性で変形のある膝疾患、膝が大きくて、触ると皮下がゴツゴツと硬い岩盤のよう、骨の境目が不明瞭で、特別に熱を持っている訳でもなく、圧痛が特定出来ないような、そんな膝疾患を、治癒に導く治療が出来ればそれは大変素晴らしい事と思いますが、今回の症例はまさにその治療です。

 お灸をやって、そのうち良くなるとか言う低レベルの治療ではなく、治療を重ねるにつれて、毎回症状の改善を患者さんに実感して頂く真の膝治療を紹介したいと思います。夢のような話のようですが、やはり基本が大事。確実にかつ丁寧に術を重ねて行けばいいだけなのですが、それがけっこう難しい、治療だけじゃなくて、継続する事、生活指導を守ってもらう事が難しい。でも、これらがしっかりと出来ると、本当に治癒まで導く事が出来るのだから、鍼灸師はやめられない。


 なんとか普通に生活している人に膝を絶対安静にしてくれなど、到底ムリな話ですね。骨折して入院して絶対安静が保てる環境が無ければ、あり得ません。肩や肘の関節であれば、痛ければなるべく動かさずに済みますし、症状は片方の場合が多いし、着替えの時にさえ注意すれば、何とかなります。
 膝や腰を痛めた場合、普段の最低限の生活そのものが症状を悪化させてしまいますので、そこが治療の難しい所の一つ。ただ、人間には自然治癒力が免疫という形などで常に働いており、骨も筋も常に再生を繰り返しています。神経細胞は別ですが。では、何年もずっと痛いのは何故でしょう?

 病院に行けば、「軟骨が擦り減っている」という説明が当たり前になされ、何故か納得させられてしまう。膝の痛みの無い高齢者の膝の軟骨は擦り減っていないのでしょうか?
特別に医学を勉強していない人が「軟骨が擦り減っている」と説明されたらその状況をどう想像するでしょうか。

 骨と骨が膝を曲げ伸ばしする時に、大腿骨とケイ骨が合わさる部分が軟骨で、それがガリガリと減ってきて、軟骨の下の固い骨の部分が当たって、痛いのかなあなんて、骨が痛いなんて想像しているのでしょうか・・・。逆に、関節内に骨棘(骨の突起)が形成されてしまっている人の膝は鍼なんぞで治るのでしょうか?またそれとは逆に、骨棘が痛みの原因に本当になっているのでしょうか?
変形だとか、年令だとか、曖昧な原因のみで医師は決断してしまいますが、医師と同じ判断でやっても、薬や手術は出来ない訳ですから、時間をかけてその人の膝の状態を本当に理解しないと治療はムリでしょう。

「年だから。」・・知的に怠惰な医療人は、こんな便利な言葉を乱発します。己の努力不足を棚に上げ、痛みの責任を患者に押し付け、そして気休め治療で金をふんだくる。


・・・・

さて、症例です。
65才男性 運送業 両膝の痛み
身長は約160cm・体重約70kgの色黒でがっちりした体格の持ち主。膝の痛みは1年前から徐々に悪化、半年前に痛みで整形外科を受診し、レントゲン等の検査を受け、医師の説明によれば、「膝が変形していて、それが痛みの原因だ。膝の筋肉を鍛えなさい。」ということだそうで、医師に言われた通り、筋肉を鍛える為に毎日1万歩以上歩くことにした。

 歩くと膝が少し痛むが、しばらく歩き続けていると、だんだん痛みが軽くなるような感じであったので、これを続ければ治りそうな気がした。だが続けるも、膝の痛みは悪化し、左膝だけ痛かったのが、右膝まで痛むようになってしまった。

 整形外科には、ほとんど毎日通い、電気治療や週に1回の痛み止め注射を受けたりしていたが、なかなか治らないので医師に相談すると、「じゃあ、手術しますか?」・・・”じゃあ”って何なんだ!と怒りを覚えたのと、入院すれば仕事を休まなくてはいけなくなり、それは困るという事で、手術は拒否。階段の登り降りまで困難になり、とうとうウォーキングを中止することに・・。

 こんな悲惨な経緯を辿ってきて、やっと私に声をかけてきたのでした。両膝とも見るからに腫れあがり、触ると熱を持っている。膝から下は、膝の腫れの影響から、浮腫んでしまってボテボテ。両膝をかばって生活しているので、腰や背中の筋肉も疲労でガチガチに張っている。

・・・もうちょっと早く来院してくれれば・・・・
そんな気持ちを抑えながら、さてどこから手をつけようかと考えながら、治療にとりかかりました。
        
 右膝と左膝、両方かなり腫れてしまっており、いわゆる”水が溜まっている”状態がはっきりと出ていました。膝の周経をメジャーで測ってみると、左膝の方が右より2cmも大きい。これからこの膝の腫れ具合を毎回観察しながら治療を行い、腫れが引く方法を試行錯誤しながら続けるのが、結局一番の早道となります。常に治療効果を検証しながらその時にその患者さんに最適な治療を!という当たり前ながら、なかなか実践されていない治療です。

 そして、今まで治らなかったのは、自然に回復する力より、日常生活によりかかる膝への負担の方が大きかったからであると考えられます。これを逆転させる、つまり回復する力を高め、負担を減らすことにより、その比率を逆転させる方法を考えればおのずと解決法が浮かんできます。

 まず鍼治療により、回復力を徹底的に高めるのと、膝への負担軽減を両方行います。膝は立っていたり、歩いたりするだけで負担がかかります。歩き方が正常でない場合は、膝への負担は健康である場合より大きくなるのですが、それが腰や背中、肩の痛みや凝りから非常によく影響を受けます。さらに腰や背中の異常をもたらす内臓の働きの異常も関係してきます。したがって膝だけ見ていると、軽い痛みであれば何とか対処できるのですが、重症となれば、全身の状態を診ないと改善に持っていく事が困難になってしまうことが多いです。 関係の無さそうな、お腹の調子やストレスが膝の負担になってしまっている訳です。

 患者さん曰く、「オレは膝以外は健康そのものやで。」健康状態と、自覚症状の無い病気の状態は全く違うのですが、一般には自覚症状なし=健康というように考えてしまいがちです。脉やお腹の状態、皮膚のツヤや顔色などの違いを周囲の人が先に気付いたりしますね、「顔色が悪いよ。」とか言われて気付いたり。こういう見方を仕事にしている人(治療家)からすると、もっと細かく、そして早い時期に判るんです。

 内臓の働き、背中や腰の調子を整える事により、ぎこちなく見えた歩き方をまず改善。そして膝、腫れを引かすには、やはり灸が有効でした。治療時間は30分弱、治療前に測定した膝の周径、治療直後にもう一度測ってみると、両方とも4ミリ以上の減少。治療後、患者さんは立ち上がり、その場で足踏みをすると、「やっぱ、痛いで、先生。やっぱりなおらんのかなあ。」・・・当たり前です・・・・。
長い間散々ムリさせてきた膝、1回の治療で治せたら、神様か何かです。自覚症状と、健康状態との相関関係は、先ほども記した通り、イコールでは無いんですね。極端な話を持ち出せば、胃癌の初期は無症状の場合が多々あるんですよね、癌なのに。だから最初にメジャーでわざわざ膝の大きさを測定したのです。自覚症状に変化が現れるまでには、日にちが当然かかります。

 続ければ治ると、治療する側が判っていても、患者さんは不安です。いくら治療直後に膝の大きさが変ったとしても、だからといって治る保証など無い訳です。治らなければムダ、時間もお金もムダ。
ただ何もしなければ、治らないというのもありますし・・。また、いくら治療する側が一生懸命でも、患者さんのヤル気も必要。本当に治る事が判れば一生懸命になってくれるのですが、患者さんにとって、初めての病気で、治らない経験しか持っていない。信じてもらえるまで、いかに治療を続けて頂くか、これも難病を難病にする要因になっています。病気が、治りにくい要因を産み、患者さんをさ
らに苦しめる。

 結局治療は3ヶ月に及びました。治療にとりかかって1ヶ月目に入って、やっと患者さんが、”膝の痛みが楽になってきた”事を実感出来たようです。患者さんは本当に治るという可能性を感じると、治療にかなり積極的に協力するようになりました。お酒を控える、風呂で無理に温めたりを避けるなど、この転機があったからこそ、治療が上手くいったと思います。
 そして、膝の腫れが減っていくのもまた患者さんにとっても、また治療者である私にとっても励みになり、日常生活が楽になっていく過程を互いに喜ぶ事が出来ました。

 病院で、「膝の骨が変形しているから治らない。」と引導を渡された膝の痛みは、こうしてどんどん減っていき、8割方治ったところで治療は終了しました。あとは患者さん自身が体調管理を続ければ、いずれ治ると確信したからです。

 おそらく、膝の骨の変形そのものには、あまり変化は与えていないと思います。でも、痛みは確実に減りました。これは、”膝の骨の変形=痛み”という誤った理解を修正すればこそ産まれる治癒の希望です。

    「病の最大の敵は、無関心でいることだ。」

 これは、パッチ・アダムスという医師の言葉です。治らないと決め付けてしまった瞬間、その病は難病、不治の病となります。鍼灸や伝統医学が万能であるとは、私も決して思っていませんし、ガンやプリオン病、膠原病の類は実際治療は困難を極めると思いますし、無力である場合もあります。

 しかし、「治らない」という決め付けをすることは、治療行為の放棄であり、可能性を完全に否定する事であり、進歩を産みません。よくテレビ等で、”奇跡の復活!”なんて言って、難病が治った場合を奇跡なんて言葉で片付けますが、場合によって私はこの表現を疑います。本当は治るべき病を勝手に「治らない」と決め付けてしまった医療人が、自分の判断ミスを棚に上げて、美談にして誤魔化している事だってあるんじゃないか、と思う事がよくあります。

 とにかく、「決め付け」は難病、奇病を産みます。だからこそ、諦めないで欲しいし、積極的に治療に参加して欲しい、自己流解釈による決め付け、諦めをしないで欲しい。こんな事を思い起こさせる症例でした。


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