寝ちがい、首や背中の筋が痛くなるような状態になったら、痛い所をむやみに触ったり首を動かしたりせず、治療を依頼して下さい。軽い症状なら治療回数2回ほどで治ります。
しばらく(一週間以上)経っても治らない場合は、その後治療せずに放置し続ければ、悪化していく可能性が高いです。しばらく放置して治らないものは、その後さらに放置しても大抵は治らないものです。つまり治療が必要であるということです。早く治療を開始する事をお勧めします。
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五十肩と言われた寝違い(治療奮戦記より)
ある晩にきた患者さんで、今月始めから、左肩の関節が抜けそうな痛みが持続していて、何とかして欲しいという。予約の電話の時点で、これだけの情報量でどのような疾患を、連想するかと言うと、限りなく広がって行きます。
まずは受傷起点。外傷があったのか、それとも何の前触れもなく痛み出したのか、それとも徐々に痛みだしたのか、左肩ということは臓器として関連ある・・・・などと連想する訳です。
そこで、五十肩といっても、広義の五十肩と狭義の五十肩の2種類ある事は周知の事実なんですが、何と言っても厄介なのが、狭義の五十肩!これは原因不明で
半年〜2年で自然治癒するが、自発痛、夜間痛、運動時痛を起し、自然治癒するまでこれといった治療法が無いという厄介モノ。病院に行って、命に関わりの無い肩関節痛は、五十肩だの、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱板炎だの、何かの診断名が一応に付きます。
この五十肩の奥が深い事は、一般の患者さんはあまり知らない、だから知り合いで五十肩やったという人に聞いて、「そんなモン、注射で一発や!」とか、「あれは難儀やで!、1〜2年は辛抱せなあかん。」等といろいろ振りまわされてしまい、命は取らないものの、精神的に打撃を受けるのには間違いないようです。
まあ、それはそれとして、その患者さんの問診の内容です。「今月始めから左の肩・・といってもこっからここまで(と言って肩先あたりから肘頭までの外側の部分を指差す。)何かスジが張ったように痛いんですわ。そんでこの肩の関節のトコが(肩甲上腕関節という、肩甲骨と上腕骨が接続する肩関節の中でも代表的な所)ずっと抜けるような感じが続いて、昼でも夜中でも痛いんです。」
上肢の前方挙上、側方挙上、後ろにまわす動作をお願いしてみたが、動く範囲はほぼ正常。
「私、知っての通り僧侶やってますんで、こうやって(合掌)手を合わせてるとだんだん肩とか背中がしんどくて、仕事も大変なんですわ(笑)。」
触ってみると、肩の筋肉の後ろあたりの深い所に反応と痛みあり。その痛い場所に熱感、発赤、腫脹はなし。「別に怪我したんでもないし、ぶつけた訳でもないし・・・。」
自発痛、夜間痛があるけど、角度は正常に動き、運動時痛は特になさそうな感じもありそう。さあ、この肩の疾患は、何を意味するのか?整形外科医だったら、レントゲン撮って、異常が無ければ五十肩と診断して、鎮痛剤と湿布薬を処方して、理学療法に通わせて、お得意様お一人ご案内って感じでしょう。接骨院だったら、干渉波とマッサージで一時的な快感とリラクゼーションを与えてお得意様一人・・・・という感じでしょうね。・・・ちょっと皮肉が強すぎかもしれません。どちらも五十肩と診断してしまえば大義名分で怖い物無しですものね。(下手に治ってしまったら、医療費せしめるのに不都合ですからね・・・。)
本当に治そうと思ったら、治療家として思い浮かぶ疑問を全てクリアにするべく、徹底的に問診を進めるべきなんです。別に特別な 治療法は必要なくって、原因を的確に掴むのが肝心なんです。
「11月の始めから痛くなったんだけど、その日の朝、寝違いみたいになって、左の頚が痛くって・・・それが何か肩に動いてきたみたいなんや。」問診のこの時点こそ、重要なカギを握っていました。
「ふーん。」と、興味を示せなかったら、失敗していたと思います。
寝違い・・・そう、答えはこれなんです。肩甲骨周囲の反応を左右両方触って、反応、圧痛を確かめると、左肩甲骨周囲に反応著明だったのです。「ここも痛いですか?」と押さえると、「ああ痛っ、そこそこ」と患者さん。きっと患者さんは、放っておけば治ると思っていたんでしょうね、そしてその寝違いと肩は関係無いと判断したのでしょうね、だから最初に言わなかったのでしょう。
寝違いになると、痛みのない姿勢に体がなろうとするのですが、それが肩甲間部周囲の筋肉に多大な負担をかける事になって、痛みが続くほどその負担が積み重なる・・・すると寝違いが治る前に新しい痛みが形成されてしまうんです。悪循環の始まりです。
新しい痛みが形成される前に寝違いが治れば、問題なかったのですが、今回は、負担が肩の方にかかってしまったという事だと考えられます。 寝違いの痛みの場所を良かれと思ってマッサージしてしまったり、風呂や酒を止めなかったりと、寝違いが長引いた原因は色々考えられます。
実際の治療ですが、押さえると痛い場所の状態を診ながら治療を進めていきました。 脉の状態、腹部の状態を観察して、経絡のどこが悪いのかをよく調べ、1箇所目の鍼をし、押さえて痛かった場所を再度確認します。すると、腫脹が少し引いてきていました。 さらに、身体の状態を整える為の鍼を3箇所加えて、痛む場所を観察すると、押さえた時の痛さは最初の6割程になっているとの事。
肩の痛みが引くまで、マッサージと飲酒を中止してもらうことを約束。
同様の治療五回で痛みは取れましたので、治療は終了しました。
原因、不安要素は多岐に渡ります。ですから体質改善を目的とした鍼灸治療が効果的なのです。
今回の症例のような、別にある本当の原因が隠れているのが非常に多いです。
例えば腰痛で、MRIでヘルニアと診断されたというものであっても、その患者さんの腰痛と、MRI画像のヘルニアとの関係が薄かった場合(鍼治療で痛みが取れたあとMRIを撮ったら、ヘルニアはそのままだった)というのもよくあります。
腱鞘炎と診断されて湿布を貼り続けている場合でも、痛みの原因が肘の腱と骨の付着部あたりが原因で、自覚していた痛みが実際の場所よりも手首寄りに出ているという場合も多いです。
頚椎症と診断されて手のシビレが続いている場合(骨が変形しているから、手術しか治す方法は無い、でも手術は難しいというような場合)で、鍼治療をしていくうちにシビレが少なくなり、レントゲン撮ったら骨の変形はそのままだったというケース。
実際治療すると、よい結果が得られる事が多いです。
このページの筆者紹介
鍼灸師 高木 秀樹
鍼灸専門・高木治療院にて、はり・きゅうを用いた治療を行っております。寝違えたら、即治療して即なおしましょう。
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