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福岡市中央区薬院、鍼灸専門・高木治療院のホームページです。

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ホワイティ薬院302号

頑固なオッサンの自己流膝治療に喝

こういう人、本当にいます。しかも毎年何人も来ます。


何もしない→安静にする。ただじっとしていれば治るものを、わざわざ余計な事をして症状を悪化させてしまうタイプの患者さん。何の根拠もない、間違った自己判断で処置を勝手に加えて、患者さん自身の手によって悪化を促進してしまっている状態。”結局誰も信じない、信じるは己の直感のみ。しかも無自覚”な危険な患者さん。

 50代男性のとある患者さんが、膝の痛みで来院されました。
患者さん「2ヶ月くらい前だったかな、いつものように朝のウォーキングに出かけてから、何となく右ひざの内側あたりが痛くなってきて、放っておけば治るかなと思ってたら、なかなか治らないんです。」とのこと。

高木「病院には行かなかったのですか?」

患者さん「まあ、痛いと言っても歩けるし、たまにこんなことがあっても、いつもなら自然に治ってたので、行ってません。会社の同僚に膝の話してたら、ここを紹介されましてね、それで今日に予約取って来させてもらったんです。」

高木「朝のウォーキングというのは、毎日の日課なのですか?」

患者さん「ええ、今朝も一時間しっかり歩いてきましたよ。いっつも朝5時に起きて家から駅の方へ・(中略)・で帰ってくるんです。」

高木「そのとき膝は大丈夫なのですか?」

患者さん「歩き始めは痛いんですけど、準備運動に膝の屈伸なんかして、歩きだして身体が温まってくる頃には、あまり痛くなくなってくるものですから、帰ってくる頃には調子がいいんですよ。」

高木「でもまた痛くなるのですね・」

患者さん「そう、身体が冷えるとダメですね。やっぱり血の循環が良くなった方が膝にもいいみたいですね。」

 この問診だけでも、患者さんの膝がなぜ2ヶ月以上治らないのかがある程度判るのです。さらに詳しく話を聞いた所によると、毎朝のウォーキングに加えて、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛える自己流の体操なるものを毎日やっているとの事でした。

 患者さんの右膝の内側だけ見ると、異常が見られないように見えそうだが、左右の膝を比べると、右膝の内側が明らかに膨らんで見える。触ってみれば、明らかに右膝の内側は少し熱く、指で強く押さえると痛み、正常である左膝の内側は指で強く押さえでも痛くない様子。右膝の内側にある筋肉や腱が炎症を起こしていると思える状態でした。

 膝が悪い時は腰にも注目。触診してみれば腰の筋肉に柔軟性が乏しい、さらに背中の右側のこり・硬さが著明に出ており、脈診で把握出来る身体の状態からしても、内臓の胃など消化する働きが弱ってしまっていることが判りましたので、その治療から始めました。腰や背中の痛み、こりが東洋医学的に診て、内臓が原因であることはよくあります。

 刺さない鍼にて内臓の調子を整え、腰・背中のこりを減らした後、右膝の内側にある筋肉の炎症の治りを早くする鍼、これは非常に浅くだが刺す鍼を使い、さらにうつ伏せになってもらい、背中の内臓に効くツボに、ほとんど熱くないお灸を加えて治療を終了。

患者さん「膝にはあまり鍼しないんですね。でも胃の調子と膝が関係あるなんて、ちょっと想像付かないですね・・。」

高木「人の身体って機械のパーツみたいに考えてはダメなんですよ。内臓も手も足も脳みそも、それぞれ互いの役割を持って助け合って、それで一人の人間が生命を維持しているのですから。私も東洋医学習って間もない頃はにわかに信じ難かったのですけどね。」

患者さん「いまいちわからんのが、なんで腰が硬くなったら膝を痛めるってところなんですよ。」

高木「歩き方がまず正常ではなくなってしまうんです。正常ではない歩き方というのは、左右の膝への体重の掛かり方、さらにそれぞれ膝の、太もものある膝より上の部分と、ふくらはぎのある膝より下の部分をつなげ支えているのが”膝関節”というものですよね、太もものある膝より上の部分の大腿骨、ふくらはぎのある膝より下の部分の脛骨(けいこつ)、あの階段の角で打つとすごく痛いところ、弁慶の泣き所のあの骨が下からお皿のように乗せている状態のところでの体重の掛かり方、つまり膝の内側に体重が掛かりやすかったり、外側であったりという傾向がある歩き方なのです。」

高木「それで歩く時に毎回右足に体重が多く掛かり、さらに右膝の内側に体重が多く掛かってしまっている状態が続けば、右膝の内側への負担が積み重なって耐え切れなくなり、傷めやすくなってしまうんです。」

患者さん「うんうん、何となくわかる気がします。2ヶ月前の朝に、膝が限界になってしまったということですか?」

高木「2ヶ月前の朝のウォーキングの時点で、積み重なった右膝の内側への負担により、右膝の内側にある筋肉や腱の本来の柔軟性がかなり失われていたと思うんです、ただそれだけで痛みが出る場合もありますが、膝の炎症の度合いや痛みの出方から考えれば、右膝の内側にある筋肉や腱が硬くなっている状態で、少し無理のある角度に足が動いた何らかのきっかけによって、非常に軽い肉離れのような状態を起こしたのではないかと考えています。少し無理のある角度に足が動いた何らかのきっかけというのは、例えば、何かにつまづきそうになったとか、不意に目の前に現れた障害物を避けた瞬間など、色々考えられますね。」

患者さん「そういえば自転車をよけたりする事は、普段けっこうありますからね。痛くなってからは、障害物をよけるのが痛くてすごく嫌になってますね。・・この膝は治りますか?」

高木「しっかり治療すれば本当に治りますよ。まずは朝のウォーキングも膝痛に効く体操というのも一週間は禁止ですね。温めてマッサージするのも止めてください。」

患者さん「歩いた方が血の循環が良くなって、治りやすいと思うのですが、ダメなんですか?」

高木「ダメです。膝に炎症ああるし、軽い肉離れのような状態、つまり筋肉に切り傷があるような状態ですから、動かし続けたら傷がいつまでたっても塞がりませんよ。」

患者さん「先生は膝に鍼を刺しましたけど、これは筋肉に切り傷がつく事にはならないのですか?」

高木「なりません、深さで一ミリに満たないのですから、筋肉になど到底およばない深さです。この鍼は膝の筋肉や腱の修復が早まる効果の高いものです。」

患者さん「そうですか・・。たしかに今は膝あんまり痛くないですけど。」

高木「とにかく、膝の内側の奥に切り傷があると思ってください。そしてその傷が塞がるまではなるべく安静にしてあげて下さいね。」

患者さん「でも生活していれば絶対歩かない訳には行かないですし、どうすればいいですか?」

高木「出来る限り安静にという事です、歩かなくてはいけない時はどうしようもないですよ。」

患者さん「次の治療までに、自分で何か出来ることとか、無いですか?」

高木「出来る限り安静にしてください、さきほども言いましたが、膝痛に効く体操というのも、暖めてマッサージするのも止めてください。」

患者さん「何もしないでくれという事ですか?」

高木「そうです。」

患者さん「手でさするのもダメですか?」

高木「ダメです。」

患者さん「先週テレビで膝痛の特集やってまして、そこでは膝の筋肉を鍛えないと治らないって言ってましたよ。」

高木「膝の筋肉を鍛えないといけない膝痛もあれば、それをやっては絶対にいけない膝痛もあります。あなたの膝痛はそれをやっては絶対にいけない膝痛と私は判断したからダメだと言っているんです。膝痛の原因はみんな同じだということですか?」

患者さん「うーん、そうですか・・・頑張ってみます。」

 こういったやりとりは、本当によくあります。私の説明が下手なのも悪いが、頑なに言う事を信じようとしない患者さんは必ずいます。案の定、「また次来るときに電話します。」と言って帰って行かれましたが、2週間で3〜4回の治療が出来てある程度の安静が出来れば完治していたのに・・もう来ないだろうと思っていたら、2ヶ月後に来院予約の電話が入りました。

患者さん「・・膝の調子が悪くなりました。」

 膝を見ると、右膝全体が明らかに腫れている状態。右膝の皮膚表面は赤く熱を持ち、歩くと痛くてウォーキングが出来なくなったとの事でした。

患者さん「鍼受けた後、次の日の朝から調子が良かったんですよ。これで治ると思って今まで通りにウォーキング続けていたら、4日くらいしてまた痛くなりまして、今度は病院に行ってレントゲン撮ってもらったんですよ。」

高木「そしたら骨が変形してるとか言われましたか?」

患者さん「軟骨が擦り減ってるから痛みが出ていると言われました。」

高木「どんな治療受けましたか?」

患者さん「シップと痛み止めの薬もらいました。それと膝に電気流してから、赤外線みたいなので暖める治療受けました。出来るだけ毎日通院しろと言われたので、週に3回以上行きましたよ。」

高木「今は通っていないのですか?」

患者さん「電気治療器は自分で持ってるし、暖めるのも毎日風呂でじっくり温める事が出来るんで、もう病院には行ってません。」

高木「ご自分で治せるのなら、私の所に来る必要無いと思いますが。」

患者さん「いや・・やっぱり治らないし、どんどん悪くなっているんで、またお願いしようかなと・・」

高木「軟骨が擦り減ってるかどうかは私は知りませんが、私の見解は以前と一緒です。一切ご自分で膝に対して何もしないで下さい。今後多少痛みが軽くなったとしても、本当に治したかったらウォーキングはしばらくダメです。」

 膝が8割方治り、ウォーキングを再開出来るまでに2ヶ月以上要しました。最初に素直に治療に取り組んでいれば、すぐ治ったのが、とんだ遠回り。ですが、この患者さん、自己流での治療が失敗だったと素直に認めることが出来たのが幸いでした。


 自己流での治療が失敗だったと絶対に認めない人の話。数々の病院・治療院を転々としながらも自己流を貫き、病院・治療院を訪れる先々で、「私は今まであらゆる治療を受けてきたんですよ、病院も何件も回ったし、検査もとことん受けた。ハリも整体もカイロとかも、知り合いでどこそこに良い先生が居ると聞けば少々遠くてもそこに行ってみましたし、それとか健康食品の○○が良いと聞けばすぐにそれを取り寄せて使ってみましたけど、私の膝痛を治せる先生は居なかった。私は普段から健康には大変気をつけており、自分で自分に整体をやって・・・云々・・」などと言うのです。どんなに効果的な治療を受けることが出来ても、そこで先生から言われた事を実践出来なければ、治らなくて当たり前。自己矛盾に気づくのが回復の最初の一歩ですが、その一歩を拒むのですから、手に負えません。


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