三大栄養素の中で、
脂質は太る要素満載の栄養素であると同時に、健康を維持するために重要な栄養素でもあるのです。細胞膜・酵素・ホルモンの原料として必要なものであり、各種ビタミンなどの栄養素の吸収を助ける働きもあり、さらに
脂質の種類により身体への影響がそれぞれ異なるので、種類を把握し、適量を摂取する意識がとても重要になります。
という訳で、
脂質の種類についての説明を続けます。
飽和脂肪酸と、不飽和脂肪酸。
飽和脂肪酸と、
不飽和脂肪酸。まずは大まかな脂肪酸の種類分けです。前のページで、「
脂質は、食事で摂取されてから、腸で
脂肪酸とグリセロールに分解される」という文章を書きました。ここに出てくる
脂肪酸の分子構造の違いで分類されます。
飽和脂肪酸は、肉類(牛・豚・鶏など)の脂身や乳製品、ココナッツオイル、あとはマーガリン・ファットスプレッド・ショートニングなどの健康を害する
トランス脂肪酸(これも
飽和脂肪酸)タップリの硬化油(こうかゆ)に多く含まれています。
トランス脂肪酸と硬化油の話は後のページへ、棚上げ先送りとさせて下さい。
人間にとって
飽和脂肪酸は、
炭水化物や
たんぱく質を代謝するときの中間代謝産物のアセチルCoAから合成することが可能、つまり
体内で作れる脂肪酸であるので、必須脂肪酸には該当しないもの、とされつつも、適切量を摂取する方が健康に良い、しかし
摂取量過多であると心筋梗塞など病気のリスクを増大させてしまうもの、という位置づけに、この文章を作成している2016年5月の時点では、そうなっています。
要するに、摂り過ぎない位に摂取すると良いですよ、としか言えない位にしか、まだ研究が進んでいない訳です。
飽和脂肪酸は体内で合成出来るのであれば、わざわざ摂取する必要は無いのではないか?などの疑問から、世界中で色々と統計調査が行われておりまして、それらデータからの推測でもって、大まかな基準を模索している真っ最中ながら、とりあえず提示している様子が、厚生労働省の「2015年版・日本人の食事摂取基準策定検討会報告書」からよく伺えます。例えば以下のものがあります。
飽和脂肪酸の摂取量が多すぎると、統計的には
心筋梗塞のリスクが上がり、インスリンの働きが悪くなり
糖尿病になる確率も上がる。
逆に
飽和脂肪酸の摂取量が少ない場合、統計的には
脳卒中のリスクが上がるように考えられた。
飽和脂肪酸の摂取量が多いほど脳卒中の発生が少ないという統計結果があるが、
動物実験ではこのような傾向が観察されなかったので、結局その因果関係は
不明。
などなど他にも色々。で、結局どれ位の摂取量が理想的なのかという事ですが、脂質摂取量が適切である前提での
総脂肪酸摂取量の3割程度が望ましい、と今のところ考えられています。
それでは、
脂質摂取量が適切である前提の具体的数値を表してみます。
1日の総摂取カロリーを1800kcalとして、PFCバランスのFである
脂質を30%とした場合。
適切な総脂質摂取量は60gとなります。その
3割程度なので、
飽和脂肪酸の適切な摂取量は
大体20g前後、と考えれば差し支えないと思われます。
注意して頂きたい点として、豚肉の脂身やチーズに含まれる脂質の脂肪酸が
全て飽和脂肪酸という訳ではありません。ネット上にあふれるダイエット情報サイトに事実誤認がちらほら見受けられます。
ここで、またしても、「
文科省の食品成分データベース」の値を使わせていただくとしましょう。用いる食材は、再び登場の
ダイエットに最適とか一部で言わつつもかなり怪しいあの食材、「豚肩ロース肉・脂身つき・生」です。
豚肩ロース肉・脂身つき・生 100gあたりの脂質・各脂肪酸量
脂質:19.2g
脂肪酸総量:17.54g
飽和脂肪酸:7.26g
一価不飽和脂肪酸:8.17g
多価不飽和脂肪酸:2.10g
コレステロール:69mg
この通り、この豚肉100g
脂質中の脂肪酸総量が、17.54gで、そのうち飽和脂肪酸量は7.26g、つまり
およそ4割が飽和脂肪酸で、
6割は不飽和脂肪酸で構成されているという事です。
飽和脂肪酸量は、総脂肪酸量の半分にも満たないという事です。案外少ない、という印象を持たれる方が多いと思います。脂肪酸の含有バランス、そんなに悪くないです。
もう一つ具体例を挙げます。バターです。
有塩バター 100あたりの脂質・各脂肪酸量
脂質:81.0g
脂肪酸総量:70.56g
飽和脂肪酸:50.45g
一価不飽和脂肪酸:17.97g
多価不飽和脂肪酸:2.14g
コレステロール:210mg
バターは乳脂肪の塊と言えるものなので、構成成分の81%が
脂質。注目して頂きたいのは、脂肪酸総量における
飽和脂肪酸量。およそ
7割が飽和脂肪酸で、
3割は不飽和脂肪酸で構成されています。
飽和脂肪酸量が、総脂肪酸量の多くを占めているのです。バターを多く材料に使う食品は、
飽和脂肪酸の量が必然的に多くなるという事ですので、注意が必要になります。
あともう1点、例外的な扱いにしておきたい
飽和脂肪酸について。
前のページで登場しました、含まれる脂肪酸の
62%が中鎖脂肪酸であり、
飽和脂肪酸比率90%以上のココナッツオイルです。代謝経路が大きく異なるので、1日あたり5〜10g程度の摂取であれば、他の飽和脂肪酸の摂取量とは別にカウントして差し支えないと思います。代謝経路が違うと言えども、
カロリーは高いので過剰摂取はダイエットに悪影響をあたえてしまうだけですので注意して下さい。摂り過ぎれば太りますよ。
「余剰カロリーは蓄積される」これが鉄則です。
飽和脂肪酸の話の途中ですが、長くなってしまいましたので、次のページにて続きを書きたいと思います。
トランス脂肪酸の話のあとに、
不飽和脂肪酸の話に移る予定です。
脂質というものが、健康にとっても注意すべき重要な栄養素であるのか、なぜその摂取量に対して敏感になる必要があるのか、さらに詳しくなって頂きたいと思います。なので、まだまだ足りません。さらに
脂質について詳しくなりましょう!
脂質について、知れば得する事が、まだ沢山ありますよ・・・。
このページのまとめ
● 飽和脂肪酸の摂取量は、多すぎても少なすぎても良くない。
● 飽和脂肪酸の含有量は、何となくなイメージと実際とでは大きく異なるので注意。
● 飽和脂肪酸の中で、中鎖脂肪酸は特別。少量なら飽和脂肪酸の摂取量から除外しても可。
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