当院には頚椎症・頚椎ヘルニアと診断を受け、苦しんでおられた方々が多く手術無しに回復し、喜んで頂いております。下記は、ある頚椎ヘルニアと診断された患者さんの症例です。
患者Aさんから私の元に最初届いたメール。
”・・・病院でMRIを撮ってもらうと、頚椎の5・6番のところにヘルニアがあって、これが神経を圧迫しているのが原因であるという説明を受けました。それから整形外科で電気治療と牽引を続けていますが、一向に治る気配がありません。どうしても治したいと先生に言うと、手術を勧められました。・・・毎日右腕のしびれと激痛に耐えながら生活しています。・・・何より苦痛なのは夜寝る時です、といってもほとんど寝てないのですが。あお向けになっても横向きになっても痛いので、毎晩イスに座って右腕をテーブルに置いている状態でいると、何となく痛みがやわらぐようなので、こんな姿勢で寝るのです。でも、同じ姿勢でいると痛みがはげしくなってくるので、腕を上に挙げてみたり、立ち上がってウロウロしてみたりして、夜が明ける長い時間を待っている有様です。ほとんど睡眠がとれていません・・・どうか、助けてください。土曜日と日曜日は休みで家にずっといますので、今週末にも治療をお願いしたいのですが、先生のご都合は・・”
私からAさんへの返事。
”・・・わかりました、早速土曜日から治療を始めましょう。それでは治療を開始するに当たってですが、まずは病院で処方された薬などはそのまま指示通り続けて下さっても何の問題もありません。また日常生活での注意点として・・・”と、頸部周囲をむやみに揉んだりしない事や、飲酒の禁止などをお願いし、それらが行なわれれば治療効果がたいへん高くなるという事を伝えました。
Aさんは福岡市〇〇区に在住の56歳の男性。2年ほど前、年末の大掃除で重たい家具を移動させていた時に右肩がちょっと痛み、2〜3日放っておいたらだんだん痛みが強くなってきたのでマッサージ屋さんで強く揉んでもらうが、翌朝起き上がろうとすると首から肩腕にかけて刺されるような強い痛み、丁度正月で会社も病院も休みであったので、2日間は家でおとなしくしていた。次の日から右手の親指にしびれを発症、近くの接骨院に行って電気治療とマッサージの治療を開始。一ヶ月過ぎても治らないので、整形外科に行くと、レントゲンで頚椎の骨と骨の間が少し狭くなっていると言われ、電気治療と牽引を続ける。
別の病院でMRIをとり、ヘルニアがあると指摘されたのが一年前。症状は悪くなっていき、腕や背中にも激痛が走るようになった。首は動かすと腕に激痛が走るのでうごかせない。
ほぼ典型的な症例といってもいいと思われます。頚椎症と診断される方で、症状が重いと、「しびれが常にあり」、「動作によって電気が走るように激痛が肩や腕を襲う」、「強い痛みで睡眠不足になる」、「車の運転が出来なくなる、または辛くなる」事に大変悩まされます。24時間この痛みの呪縛に堪えつづけなければならず、生きている事さえ苦痛に思ってしまいます。
初回の治療日、問診の後
高木:「もう発症してから2年も経っていますので、すぐ良くなるとは決して思わないで下さい。でも治療をする度に確実に痛みは軽くなっていきますので頑張りましょう。」
Aさん:「そりゃ、魔法みたいにすぐ良くなるとは思ってませんよ先生、もう痛いハリでも何でもガマンしますから、おねがいしますよ。」
頚椎症の治療では、脈をみて刺さない鍼をする前に必要な治療があります。これは深さで言えば非常にわずか、1ミリにも満たない浅くハリを刺す治療です。そのためにまずは、うつ伏せになってもらい、首や背中をしっかり観察。プロの治療家が見れば、その見た目の肌の色つやだけでも明らかに異常とわかります。さらに詳しい情報を得るために指で触り、骨や筋肉、腱の状態をしっかり観て、左右の差も確認。
高木:「うつ伏せの姿勢、けっこうキツイと思いますけどもう少しガマンして下さいね・・Aさん、首も背中もほぼ予想通りの状態ですよ。」
Aさん:「そうですか・・まあ、治療おねがいします・・」
腕の位置を、なるべく痛くないような所にもってきて、何とかうつ伏せになれました。今まで色々な医療機関にことごとく裏切られてきた訳です。当然私の治療が本当に効くかどうかなんて疑わしいものと思うでしょう。信頼してもらうには言葉よりも何よりも、結果を出すしかない。うつ伏せの状態での治療を開始しました。
疑心暗鬼ぎみであったAさん、最初は無口であったのに、治療を進めていくうちに、だんだんじょう舌になってきました。
Aさん:「こんな治療法、初めてですよ。何か背中にあったモヤモヤしてるなんかが、スーっと取れていくみたい。」
うつ伏せでの鍼治療が一応終わり、一度起き上がってもらう。
高木:「痛い姿勢長くしてしまってすみません。どうぞ一度起き上がってみてください、ゆっくりですよ、ゆっくり。」
起き上がるAさん。ゆっくり起き上がると深くため息を吐き、
Aさん:「あ〜〜。何か背中が、あれっ、あー軽い! ちょっとだけど首が動くよホラ!」
初めて嬉しそうな表情を見せてくれたAさん。この時は、もしかしたら今度こそ本当に治るんじゃないかという期待と疑いが半々だったと後に教えて下さいました。
高木:「では、あお向けになってみて下さい、ホームページにあった”刺さないハリ”やりますよ。あお向けがどうしても痛かったらそのままの姿勢でもいいですよ。」
Aさん:「背中が着くと痛いんだけどね、・・いたたたたっ。 あっ!いつもより痛くないよ。これならガマンは出来そう。」
脈をしっかり診てAさんの体質を把握。脈を診ながら足にあるツボを探し、また食生活や仕事の事を聞きながら治療。そして初回の治療を終了しました。
Aさん:「こんな事言ったら先生には失礼だけど、何か今回は本当に効くように思うよ。だってホラ、さっきまで首全然動かせなかったのに、こんなに動きますよ。あと背中のオモリが少し取れたみたいな感じ!」
腕をおそるおそる廻したり、頭をゆっくり左右に振ってみせて喜ぶAさん。
高木:「良かったですホントに。これから治療するごとに軽くなってきますから、治療頑張りましょう。」
Aさん:「でもこれ、しばらくしたら痛みがまたすぐ元に戻ったりはしないんですか?」
高木:「原因と思われる所をしっかり治療していますから、大丈夫ですよ。とにかく徹底的に治療しましょう。出来れば明日も治療したいのですが、Aさんご都合いかがですか?」
Aさん:「ええ、是非お願いします!」
多くの場合治療直後の効果としては、Aさんの言う首や背中の改善が多いです。そしてこの後、夜にどれだけ寝れるかという所も重要です。私が行なう頚椎症治療の場合、症状の重い人ほど回数を詰めて行なえると効果が高いです。出来れば最初の数回は毎日が最も望ましいです。
治療2回目
昨日より少し晴れやかな表情をして、
Aさん:「先生、昨日はちょっとだけど寝れましたよ!3時間くらいだったけどね。」
治療前までは身体を横にする事が苦痛であったAさん、治療後それが痛いながらも出来るようになり、短時間ながら睡眠が取れたとの事。でも腕の激痛でまた目が覚めてしまったそうです。
高木:「それはすごくいい傾向ですね。それでは今日の治療で、もっと寝れるように頑張りましょうよ。」
Aさん:「先生に言われた通り、水も沢山飲んでますよ!晩酌も止めた。もう何としても治りたいからね。」
前回のように首と背中の処置、そして体質改善の鍼治療。治療後、しびれは相変わらずあるが、首を動かした時に出る腕の痛みが確実に弱くなっているとの事。
Aさん:「なんかどんどん取れてくるね、痛みが。今日はあお向けになってる時、痛みよりも眠くなりましたよ。」
この日の晩、1年以上振りに5時間続けて睡眠をとる事が出来ました。Aさんには治療をしている期間に水を沢山飲む事をお願いするのですが、これを実行するとより早く治るようです。新陳代謝が活発になって、自然治癒力がよく高まるからではないかと考えていますが、あくまで想像の域の解釈です。
その後、一週間に最低3回の治療を2ヶ月続け、前腕と親指に軽いしびれが残る程度まで回復した所で治療を終了しました。いづれそのしびれも消失するでしょう。
多くの頚椎症患者さんを治療してきて、Aさんのような治療経過をたどるのが標準だと思います。ただし個人差はどうしてもあるので、7〜8回の治療で完全に治ってしまった人もいます。激痛に関しては2〜3回目で軽くなってくるのがほとんどです。治療効果があまり出なかった人(1回で治ると勘違いしていたであろう人)も今まで少数います。
当院に来院して頂いた頚椎症患者さん達、ほぼ皆が病院でレントゲンやMRIで頚椎の問題を指摘された方です。私は頚椎症についてMRIの結果はあまり信頼出来ないものと思っています。臨床を続けていくに従ってその思いは確信に近づいています。
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