慢性だからと決め付ければ治療動機が芽生えない
急性のぎっくり腰や、病院で頚椎ヘルニアが原因と間違った診断を受けやすい背部痛や上腕部の神経痛など、または捻挫などの場合に特によく見かけるのが、この時に決してやってはいけない事である行動、痛い所を揉む・暖める・無理に動かすことをやってしまっている場合。ただ、病院によっては「リハビリのために暖めたりマッサージすることが良い」と言う所があるし、リハビリと称して逆効果の温熱療法やら超短波療法やら低周波治療をする所がほとんどなので、素直に医療機関に従ってしまった場合は当然仕方ないのですが。
とある40歳代の男性の患者さん「一年前に産まれて初めて”ぎっくり腰”ってやつをやりましてね、それからずっと調子が悪いんですわ。当初はもう全く動けないくらいの激痛でしてね、2〜3日は家で寝とったんですよ。激痛は引いて、やっとこさ動ける状態になったんで、病院行って検査してもらったんですけど、腰椎の3番から5番の間がヘルニアになりかかっているから、これが原因やと言われました。」 典型的な”ヘルニアが原因と診断されたが実際はヘルニアが原因ではないと思われる腰痛”の患者さん。
患者さん曰く、「病院行くと待たされる時間が長いんで、牽引も薬もあんまり効かないのでもう行くのを自分からやめました。以前行ってた整体にまた通いだして、週1〜2回腰の痛い所を重点的に揉んでもらってます。マッサージ受けると1日2日は治るんですわ。電気治療より気持ちいいし。」
高木「マッサージ受けて、一日か二日はマシなのですね?治ると言うより・・」
患者さん「そうそう、治っては無いですね、今も痛いから今日来たんです。」
この患者さんの腰痛は、整体(無免許違法マッサージ)に行かなければ、もう既に治っていたかもしれません。安静にしていれば治るものを、整体と称して傷口をグリグリ圧迫して回復を妨げる行為が繰り返され腰の筋肉が炎症を増し浮腫を生んでしまっているのが、腰周囲の皮膚の状態を一目見るだけで明らかにわかる状態になっていました。
病院ではレントゲンやらMRI検査は行いますが、痛めている腰についてじっくりと診察して入念に痛い場所を特定するという事をほとんどしないので、また筋肉を傷めていると判ったところで、湿布や痛み止め薬という対症療法しか治療手段を持っていないので、まず治療効果など期待出来ません。
整体などの素人無免許マッサージ屋に行けば、どんな症状であろうとも、「血液やリンパの流れを良くすれば治ります」という医学知識皆無でも使える何の説明にもなっていない用語で患者さんを説得し、ひたすら痛い場所を刺激しますので、病院の治療よりは効いた気がするのですが、ほとんどの場合、患部が圧迫によりさらに損傷し悪化します。
こういうごまかし治療を受けた直後にラクな感じがするのは、患部が繰り返し圧迫される事により痛みが一時的に麻痺しているからで、決して治っているからではありません。むしろ悪化している場合が多いです。
当院の鍼灸治療では、本当に治癒するための治療が可能なのですが、ただ腰に針を刺せば良いというものでは決してありません。方法を間違えばごまかし治療にしかならないものです。例えば腰に針を刺して電気を流す治療法は、患部に繰り返し電気刺激を与える事により痛みが一時的に麻痺するだけの典型的なそれの一つで、根本的な解決への手段とは程遠いもの、まあ良く言えば対症療法ということなのですが。
腰痛の種類により当院では治療法がそれぞれ全く異なります。刺さないはりとお灸だけでの治療になる場合もあれば、患部に深さ一ミリ未満の鍼を刺す治療になる場合もあります。それは症状の根本的な原因が何かによって変わります。
最初に登場した40歳代男性の患者さん、当院での一回目の治療が大方終わり、以前のマッサージを受けた時とは明らかに異なる腰の軽さを実感して頂きながら、上記を説明した後で・・
高木「本当に腰痛を治したいとお考えでしたら、本日より痛い所を揉む・暖める・無理に動かすことを一切禁止してください。」
患者さん「ということは今まで腰痛が悪化することばっかり一生懸命やってしまっていたって事ですね、どうしてもマッサージされた後はその時だけでも楽なんで、良い事と思ってましたよ。」
一年近くマッサージを繰り返してきて治らなかったこの患者さんの腰痛は、患者さんご自身の自己管理も徹底されており、その自己管理がとても上手であったので、当院の鍼灸治療8回で完全治癒、ゴルフをした後でも痛みが全く出ない状態になりました。
完全治癒するまでの必要治療回数は、大きく個人差があります。早い人で2〜3回、多くの回数を必要とする人では週1回の治療を半年以上の場合もあります。治療回数を少なく完全治癒させるコツは、自己管理を徹底する事に尽きます。週1回の治療の場合、7日間のうち私が患者さんの腰痛と接するのは一時間に満たず、残り167時間と少しは患者さんご自身が患部を自己管理することになります。
腰の筋肉が傷んでいる場合は、いかに日常生活の中で患部に負荷を与えないようにするかが最も重要で、自己管理が上手な患者さんの中には数年来の慢性腰痛が4〜5回の治療でほぼ治ったというケースも多く、また反対に仕事上どうしても付き合いでゴルフや深酒、出張で長時間の移動があるなどの場合は、治療回数5回前後に腰の痛みの度合いが7〜8割方消失し、その後の治療では効果が足踏み状態になる事が多いです。
慢性腰痛、本当は治るものがほとんどです。ヘルニアがあろうとも、手術して痛みが取れなかったとしても、刺すハリを受けたが効果が無かったとしても、電気針で治らなかったとしても、あきらめずに当院の治療を受けてみて下さい。本当に治るかもしれません。
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